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特許庁で拒絶された商標が他人に登録された!
「音楽マンション事件」

執筆者:服部 秀一
更新日:2017年12月1日
 出願して特許庁で拒絶された商標「音楽マンション」が、11年後に他人によって出願され登録された商標登録の無効を争う訴訟において、その有効性が認められた判決があります(平成28年(行ケ)第10191号)。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/782/086782_hanrei.pdf

 その判決では、「音楽」の文字は「音による芸術、拍子、音色、ミュージック」等を意味し、「マンション」の文字は「中高層の集合住宅」等を意味しており、これら文字を一連にした「音楽マンション」という文字は、その構成文字全体から、特定の意味合いを有さず、一種の造語として理解されると判断されております。

 原告は、同様の「音楽マンション」を平成14年に出願したところ、「音楽の演奏が可能なマンション」のキャッチフレーズ的意味合いを認識させるに止まるものであるから、いわゆる識別力なし(商標法第3条第1項第6号等)とする拒絶理由通知を受けました。
 その拒絶理由通知に対し、原告は、「音楽マンション」という文字がマンションの品質に係るものではない等と主張した意見書を提出したものの、その主張が認められず拒絶査定となり、その査定を不服とする審判を請求せずに登録を断念した経緯があります。

 原告が登録を断念した理由としては、同様の商標を他人が出願しても同様の審査結果になると考え、原告は、その商標「音楽マンション」の使用を継続したものと思われます。

 しかしながら、その11年後の平成25年に、被告が同一の商標「音楽マンション」を出願し、ほぼ同様の理由の拒絶理由通知を受けたものの、それに反論する意見書を提出した結果、登録が認められております。

 原告としては、自分が出願したときは登録が認められず、その後、他人(被告)が出願したときは登録が認められたという状況は、その商標を使用し続けている背景からも、決して納得できるものではありません。他人(被告)に商標登録されてしまうと商標権侵害となり、原告はその商標を使用できなくなり、損害賠償の対象となってしまうからです。

 そこで、原告は、被告の商標登録「音楽マンション」も同様の理由(商標法第3条第1項第6号等)で無効であるとする審判を特許庁に請求したところ、その無効が認められず、本訴訟を請求するに至っております。

 本訴訟において、原告が行った出願に対する特許庁の判断(拒絶査定)は誤りであると判断されているものの、その拒絶査定に対して原告が審判を請求して正しい判断を求めなかったことから、原告の主張は採用できないと判断されております。
 これでは、原告は、特許庁の判断(拒絶査定)が妥当なものと受け入れたにもかかわらず、後になって、その判断が裁判所で撤回されたのでは、たまったものではありません。

 不服とする審判を請求せずに拒絶査定が確定した出願については、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)が管理する特許情報プラットフォーム上に掲載された出願情報が、追って削除されてしまいます。
 したがいまして、本判決から見えることは、いわゆる識別力なしとする拒絶理由通知を受け取った場合は、まず意見書で反論し、その反論が認められなくても不服の審判を請求して、その審決を得るところまで対応する必要があるということです。
 審決が出ますと、審決公報が発行され、特許情報プラットフォーム上に掲載されます。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
 そうしますと、追って出願しようと思った他人は、その商標を出願した場合に登録されるかどうかの調査を行った際に、その審決公報がヒットして出願を断念する可能性が高いと考えられるからです。

 ただ、不服の審判を請求するためには、一般的に出願の際の費用以上の費用が必要となりますので、登録される可能性が低いにも関わらず、大きな費用負担となってしまいます。

 そこで、このような問題の対策としましては、いわゆる識別力の低い商標については、ひとまずロゴ化や図形を組み合わせる等して商標登録しておくという対応が考えられます。

 現在の情報社会において、識別力の判断は、画一的なものではなく移り変わっていくものですので、商標登録をお考えの方々は、ぜひその登録の可能性について、知的財産の専門家である弁理士に相談して頂きたいと思います。

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